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私の不安が解消されるのなんて、この場限りの気休めなのかもしれない。
こんなに求め合ってるように感じるけど、どこかすり抜けていきそうな彼を引き止めるかのように、首に腕を回した。
女の影が見え隠れする篠宮と、"この夜は傷を埋めるため"だと嘘をついた私。
愛を囁やけるわけでもないのなら、言葉なんていらない。
もう今は、余計な事など考えたくない。
ベッドに移動して、仰向けのまま沈む私を見下ろす篠宮の表情は色っぽくて、そのまま私の首筋に顔を埋める。
ぞくりとする快感が、たちまち体中を支配していく。
後先なんか考えられないくらい、篠宮に溺れたいと思った。
覆いかぶさる篠宮の重みを心地いいと感じながら、ふと窓の方へ視線をやると、レースのカーテンの向こうに半分の月が見えた。
これから、この恋は満ちていくのだろうか。
それとも、欠けていくのだろうか。
この気持ちを止められなかったのは、私だ。
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