私だけを見て

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「………ん」 「もうお昼だよ」 うー…と気怠そうに体を起こそうとしたものの、またパタッと布団に突っ伏す。 「起きれる?」 「うー…ん」 今にも、目閉じそうじゃん。 ぶっ、可愛い!! 曖昧な返事をする篠宮を、ニヤニヤして見ていたら、私の方へ手が伸びてきた。 ん? そう思ったのも束の間。 布団へ引きずり込まれる。 「もぉ!何するのよ」 「ちょっとだけ」 ぎゅーーっと、胸に顔を埋めて抱きつかれる。 ちょ、ちょっと… 可愛すぎない? いつも抜け目なくて、スマートな篠宮が、こんなにグダグダなんて… 愛しさが爆発しそうなんですけど! 「…朝弱いの?まぁ、もう昼だけど」 「苦手」 出会って長い時間が経ったけれど、プライベートなんて本当に知らない仲だった。 こんな些細な事だけど、違った一面をひとつ知れた事に嬉しくなる。 「へぇぇぇ、そうなんだぁぁ〜」 「なんでそんなに嬉しそうなんだよ」 「べ、別に」 篠宮はふぁーとまた欠伸をすると「はぁ。起きるわ」と言って、よっこいしょと体を起こした。 篠宮から開放された私も体を起こすと、目の前には無駄な肉のない男らしい上半身が、布団から抜け出した事で顕になって、ドキッとしてしまう。 「さっきは元気だったのにね」 「朝は…。まぁ、色んな要素が合わさって元気になった」 「何の話ししてんの」 何だか色んな事が変わるような気がしてたけど、いつもの私達の空気は変わらなかった。 いや、違うか。 だいぶ、甘くなった…。
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