私だけを見て

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こういう事を相手に聞くのって勇気がいるけど、相手が篠宮だと更に聞けない。 前に、篠宮の修羅場を社内で目撃した時、「なんでホテルに行ったの?」と詰め寄る女性に「そんな雰囲気になったから」って言ってたっけ。 その人は「好きだから誘った」と言ったけど、篠宮は遊びだとバッサリ切ってた。 ……今、私も似たような感じじゃない。 私から誘って「本当は好きです」なんて伝えて切り捨てられたら……立ち直れないかも。 「篠宮」 「ん?」 「タバコの口止め料の件だけど」 ニコッと笑うと、篠宮が「忘れてた」と呟く。 「はいはい。なんでも言う事聞きますよ」 「ご馳走してもらおうかなー」 「何がいいの?」 「口止め料だからねー」 フフンと意地悪な顔をして笑うと、篠宮もハッと笑った。 「いつ?今日?」 「ううん。来週の木曜日」 「……なんでそんなど平日?」 「この日が暇なの!」 篠宮はじっと私を見た後、「じゃあ、口止め料だから奮発するかなー」と言って笑った。 篠宮が私の事を好きなのか、遊びの一人なのか、正直分からない。 確信が欲しい。 「楽しみにしてるからね」 お互い、顔を見合わせてフッと笑った。 今はこうして側にいて、篠宮を繋ぎ止める方法しか思いつかない。
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