私だけを見て

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「マジで」 「すみません」 「なんで謝るのよ」 文香にツッコまれる。 今日は、篠宮が教えてくれたワインバーに文香とやってきた。 もちろん、話題は篠宮の事だ。 「どうするの?」 「どうしよう。日頃からよく分からないヤツだけど、更に分からない」 「確かに〜」 文香がアンチョビポテトをつまみながら、ケラケラと笑う。 「しかし菜月と篠宮がねー。 うわぁー、何だろ!やっぱり想像できない!」 「だよね…」 「ねぇ、同期会やろうか?! あんた達二人がどんな感じなのか見たい!!」 「やめて、やめてーっ!!」 絶賛拒否したが、文香のフフッと笑った顔が何か企んでそうで怖い! 「で?」 「はい」 「好きなの?」 「……好きです」 あぁ、恥ずかしい…。 他ならない文香にカミングアウトする事でさえ、顔が赤くなってしまう。 「ちょっと、感激だわ」 文香が口に手をあて、目をキラキラさせている。 「クールビューティーな及川さんはどこ行っちゃったの?すごいな、篠宮。 菜月を振り回すなんて!」 「……有村さんの登場になりふり構ってられなかった…。女の醜い嫉妬よ」 「だけどさ、今までならプライドが勝ってたでしょ? "私は気にしてませんから"って態度を取って、後で私に泣き言と暴言をぶちまけてたよね?」 「確かに…」 そうなんだけど、どうしても嫌だと思った。 プライドを守る事より、例え醜くても、素直な気持ちに抗えなかったんだ。
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