私だけを見て

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「で、もう一回聞くけど。 菜月はどうしたいの?」 自分の気持ちか…。 篠宮にどう思われているか、何を考えているのかって不安ばかり大きかったけど、私の気持ちだけを見つめるならば……。 答えは一つしかなかった。 「私だけを見てって言いたい…」 言ってしまって、あまりの恥ずかしさに顔を覆う。 あぁ、もう。何言ってるんだ。 私、アラサーなんだけど。 「いやー。菜月って一見そんな風に見えないのに、本当に乙女だよね」 「痛くてすみませんね」 「違うよ、可愛いって言ってんの!」 ニヤニヤする文香の視線に耐えかねて、ヤケクソのようにグビッとワインを飲む。 「気持ちがはっきりした時が来たら、素直になってって言ったでしょ?否定なんてしなくていいよ」 少し照れくさい私は、口を尖らせたまま。 そんなうまく気持ちを表現できない自分が、ワイングラスに映る。 「ねぇ、どこがそんなに好きなの?」 「うっ。もう、止めてよー」 「だって篠宮だよ?」 「ちょっと、その言い方いい意味じゃないでしょ!」 思わず食いつくと、顔を見合わせてケラケラと笑う。 文香は前のめりになって、目を爛々と輝かせている。 「私にとって篠宮って…甘えられる存在なんだよね。 つい、考えすぎてしまう事をそうじゃないだろ?ってサラッと荷物を降ろさせてくれたり、わがまま言えたり、弱音を吐けたり。 自分がさぁ、すごく可愛い女みたいに思えるんだよ。守ってもらってるみたいで」 本来、私はこういう女なんだ。 強がっているけど、弱虫で甘ったれで。 だけど、誰にでもそんな自分を見せられる訳じゃない。
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