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「あぁ、恥ずかしい…。
あの掴み所のない男に言えるかな…」
「逆でしょ」
「え?」
文香がフフッと笑う。
「篠宮だから言えるでしょ?」
あ……。
そっか……そうだよね。
素直な気持ちを、ありのまま出せたのは篠宮だった。
もう、かっこ悪い私も散々曝け出してるし。今更じゃない。
「木曜日のデート。
いい記念日にしなよ」
文香がそう言って、グラスを私の方へと差し出す。
怖くて不安だけど、勇気を出したい。
「好きって、言ってくる」
少し弱々しい声で、私も文香の方へグラスを差し出す。
この恋が、うまくいきますように。
そんな願いを込めて、カチンとグラスを合わせた。
「あと私が出来るのは、篠宮がクズじゃない事を祈るのみだな!」
「ちょっと!決意がブレるような事言わないでー!!」
文香に揶揄われながらも、柔らかい空気が私達を包む。
ねぇ、篠宮。
ここで初めてアンタに心を見せた時みたいに、ちゃんとありのままで伝えるから。
篠宮も誤魔化さないでね。
もう、どのみち元の同僚という関係には戻れないのならば…
私は篠宮の恋人になりたい。
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