私だけを見て

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「あー、涼しい…」 本社に戻るなり、思わず独り言を呟いてしまった。 今日はもうすぐオープンする新しい店舗へと足を運び、ディスプレイの確認など、最終調整を行ってきた。 しかし、夏はもうすぐそこで、とにかく陽射しが暑い。 クーラーがきいたオフィスってありがたいなんて思いながら、喉を潤そうと1番近くの休憩室へと足を運ぶ。 何だかんだ毎日は忙しくて、決戦の木曜日はついに明日。 篠宮からは、普通にメッセージが入ってきて、普通に携帯でやり取りしている。 甘い言葉なんてないけれど、連絡を取り合うなんて事すら今まで無かった事だから、変化が嬉しかったりする。 フフッと思い出し笑いをして、口角を上げたまま休憩室の扉を潜ると、中にいた人物にギョッとしてしまう。 「あ、お疲れ様…」 ズラリと並ぶ自動販売機の前にいた聡君が私に気づいて反応したものの、表情が固くなる。 それもそのはず。 向かい側にはペットボトルの紅茶を持った江名がいた。 「お疲れ様です…」 もう、勘弁してよーー! 自分のタイミングの悪さを呪う。 ここで出て行くのもおかしいし、喉乾いてるし、とりあえず笑顔で挨拶を返すと、江名がこっちへ歩いて来た。 「すみません、自販機前を塞いじゃって邪魔ですね。ごめんなさい」 江名はペコリと頭を下げてそそくさと休憩室を後にしたから、聡君も追うように「お先に」と言って、少し気まずそうに笑うと、さっさと出て行った。 …………。 あれ? 2人のツーショットを見たのに、割と平気。
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