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結局、ブラックは飲めないので、カフェオレを買ってもらう。
「はい」
「ありがとう」
紙カップを手渡された際に、腕まくりした水色のシャツから見える男らしい腕に、胸キュンしてしまう私は結構重症かもしれない。
あの夜から、数日ぶり。
些細なメッセージで連絡を取り合ってはいたけど、やっぱり会いたかった。
自販機の前で、何を買おうかと悩んでる篠宮を見ながら、会えた事が嬉しくてフフッと笑みが溢れる。
この間は可愛かったなぁ…なんて、私の家で過ごした事を思い出しては、幸せな優越感が胸をくすぐる。
「あ、そうだ。
俺、明日朝から外に出なくちゃいけなくなってさ。そのまま店に行くわ」
片手をポケットに手を入れたまま、ピッと自動販売機のボタンを押す。
「そうなの?」
「うん。たぶん俺の方が早く着くと思うから、待ってる」
カップコーヒーを手に取り、振り返った篠宮がニコッと笑った。
あぁ…ヤバい。
時々こういう顔をするのよね。
ズルいなぁ。
いつも私はあんたの仕草や言葉に振り回される。
「…明日、有名レストラン予約してくれてるんだね」
そう。
篠宮が予約したのは、有名ホテル内にあるレストラン。
夜景も見える人気スポットで、確かに一度は行ってみたい場所ではあったけど、その辺の居酒屋値段でない事くらいもちろん知っている。
「口止め料ですからね。奮発させて頂きました」
「まさかそんな高級な所にするなんて思ってなくて…。冗談だったのに…ごめん」
さすがに申し訳なくて謝ると、篠宮がじっとこっちを見た。
「嫌だった?」
「え、まさか。……嬉しいよ?」
慌てて手を振り否定しながらも、最後はモゴモゴと小声になり、目を逸してしまった。
ちょっと…
仕事モードじゃない時の、私の対人スキル
どうよ……。
カフェオレに口をつけながら、自分に呆れていると、ひょいっと顔を覗き込まれた。
「へぇー、可愛い」
んなっ!!
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