私だけを見て

17/24
前へ
/283ページ
次へ
結局、ブラックは飲めないので、カフェオレを買ってもらう。 「はい」 「ありがとう」 紙カップを手渡された際に、腕まくりした水色のシャツから見える男らしい腕に、胸キュンしてしまう私は結構重症かもしれない。 あの夜から、数日ぶり。 些細なメッセージで連絡を取り合ってはいたけど、やっぱり会いたかった。 自販機の前で、何を買おうかと悩んでる篠宮を見ながら、会えた事が嬉しくてフフッと笑みが溢れる。 この間は可愛かったなぁ…なんて、私の家で過ごした事を思い出しては、幸せな優越感が胸をくすぐる。 「あ、そうだ。 俺、明日朝から外に出なくちゃいけなくなってさ。そのまま店に行くわ」 片手をポケットに手を入れたまま、ピッと自動販売機のボタンを押す。 「そうなの?」 「うん。たぶん俺の方が早く着くと思うから、待ってる」 カップコーヒーを手に取り、振り返った篠宮がニコッと笑った。 あぁ…ヤバい。 時々こういう顔をするのよね。 ズルいなぁ。 いつも私はあんたの仕草や言葉に振り回される。 「…明日、有名レストラン予約してくれてるんだね」 そう。 篠宮が予約したのは、有名ホテル内にあるレストラン。 夜景も見える人気スポットで、確かに一度は行ってみたい場所ではあったけど、その辺の居酒屋値段でない事くらいもちろん知っている。 「口止め料ですからね。奮発させて頂きました」 「まさかそんな高級な所にするなんて思ってなくて…。冗談だったのに…ごめん」 さすがに申し訳なくて謝ると、篠宮がじっとこっちを見た。 「嫌だった?」 「え、まさか。……嬉しいよ?」 慌てて手を振り否定しながらも、最後はモゴモゴと小声になり、目を逸してしまった。 ちょっと… 仕事モードじゃない時の、私の対人スキル どうよ……。 カフェオレに口をつけながら、自分に呆れていると、ひょいっと顔を覗き込まれた。 「へぇー、可愛い」 んなっ!!
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4319人が本棚に入れています
本棚に追加