私だけを見て

20/24
前へ
/283ページ
次へ
『いよいよ明日だね。頑張って』 夜。 文香からガッツポーズのスタンプと共にメッセージが送られてくる。 『緊張する。フラレたら慰めてね』 『なんでも聞くよ! でも、見込みない人にこの先入れこむより、ハッキリさせた方が良くない?』 『確かに』 『私達も三十路を過ぎたんだし』 ベッドに転がりながら、文香とメッセージのやり取りをする。 まぁ、そうだよね。 いつまでも時間がある訳ではない。 特別結婚願望が強いわけでもないけれど、報われない恋はしたくない。 『いい記念日になる事を祈ってるよ。 私も後日お祝いするから!』 文香のメッセージを見て、フフッと笑って『ありがとう』とメッセージを返した。 心が柔らかくなるのを感じながら、スマホを眺めていると、突如、着信音が鳴った。 突然のけたたましい音に驚きながらも、切り替わったディスプレイ画面を見て、また心臓が止まりそうになった。 「着信 篠宮壱哉」 え?! え、え、え?! 今は、23時。 こんな夜に電話して来た事なんてないし、今日は長谷部君たちと一緒にいると言ってたけど…、何?! もしかして、明日都合悪くなったとか……?! 一瞬で色んな事が頭を過ぎり、心臓がバクバクと音をたてているのを落ち着かせながら、冷静に通話ボタンを押した。 「もしもし」 『なっちゃーん、俺』 軽っ!!! ガクッと肩透かしにあったような感覚になる。
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4320人が本棚に入れています
本棚に追加