大人だから

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結局、ワインをもう1本開けて、散々愚痴って店を出た。 溜め込んでたものを吐き出して。 傷を癒してもらって。 自分の思いを聞いて、支えてくれる人の存在は大きい。 「じゃあね、菜月!しんどくなったらいつでも電話してよ!」 「ほんとありがとね、文香」 また月曜日にねーと手を振って、タクシーに乗った文香を見送った。 テイルランプが小さくなっていくにつれ、この世界に1人置いていかれたような孤独が襲ってくる。 そう。誰かと一緒にいる時はいいのだ。 だけどどうあがいても、1人の夜は毎日やって来る。 人恋しさを抱えたまま自宅に戻り、ベッドに沈みこむと、今日の出来事が次々と浮かぶ。 酒に侵され、フワフワした思考回路のまま目を閉じても、思いを巡らせる先は分かっている。 聡くん。 会いたい………。 耐え難い孤独に、衝動的にスマホを手に取り、彼の電話番号をタッチしようとして、踏みとどまった。 ………今は江名といるのかな。 ギュッと握りしめたスマートフォン。 押せない、電話番号。 2人の事を想像するだけで、苦しくて、苦しくて。 だけどこれが現実で。 「淋しい…」 独り呟いた言葉は、誰にも届かない。 どうして人は、人を好きになるのかな。 どうして気持ちって、変わってしまうのかな。 そんな答えのない疑問を、毎日持て余してしまう。 いつか聡君と元に戻れたら……戻りたい。 まだ消せない電話番号が、私の諦めの悪さを物語っている。
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