私だけを見て

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「どうしたの?」 電話の向こうからは、小さくクラクションや風のゴォっという喧騒音が聞こえる。 静かではあるけれど、まだ家ではないらしい。 『何してるかなーと思って』 「家でゴロゴロしてるよ。 ……篠宮は?」 『俺は、まだ飲んでる』 やっぱり外にいるんだ。 しかし、そんな飲み会の途中に…何? 「それで…どうしたの? まだ飲んでる途中なんでしょ?」 『会いたくなって』 ……………………… ……………………………へ? あまりにもサラッと爆弾を落とすものだから、思考回路が停止してしまう。 「……酔ってるの?」 『かなり』 「えっ?!明日、大丈夫なの?」 『大丈夫、大丈夫』 ヘラヘラ笑っている。 ……なんだ。酔っ払いの戯言か…。 危なく真に受ける所だった。 私と二人で飲んだ時はもちろん、同期の飲み会でも酔っ払ってる所を見た事がないけれど、どんな飲み方したんだ。 『及川も来る?』 うん。酔っ払いとは無敵だ。 無茶苦茶言ってる。 「行けるわけないでしょ。もう化粧も落としちゃったし、これから寝るところ」 呆れた声で篠宮に伝えると、「ふーん」といつもみたいに何を考えているのか分からない返事をした。 『じゃあ、なっちゃんち行くね』 はぁっ?!
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