4320人が本棚に入れています
本棚に追加
「───っ!」
驚きから声にもならず、思わず通話を切ってしまった。
手が……震える。
心臓がバクバクとものすごいスピードで脈打つ。
何、今の…?
篠宮に電話……したはずだよね?
震える手で発信履歴を確認する。
ちゃんと、篠宮に電話をしていた。
手から滑り落ちたスマホが、ガタンと床に転がる。
呆然としたまま、力が入らない。
浮かれていた自分が惨めになって、驚くくらいサーッと気持ちが引いていく。
これから起こるだろうと想像していた事が、全部バラバラと崩れ落ちていく。
……何考えてたの、私は。
篠宮って……そんなヤツじゃない。
──会いたくなって。
ハハ。笑える。
さっきの電話の女の人にも「会いたい」とか言って、一緒にいるんだよね。
あぁ、そう…。
バカみたい、私。
勘違いして、浮かれて、好きだって言おうとして。
私だけを見て欲しいなんて、どうかしてた。
ぐっと唇を噛み締めるけど、涙が溢れて、息が苦しい。
もう一度、電話をかける勇気なんてない。
一人うずくまって、やるせない夜を耐えるしかなかった。
篠宮は………私の元へは来なかった。
最初のコメントを投稿しよう!