4320人が本棚に入れています
本棚に追加
「今日はよろしくお願いしまぁす!」
可愛い声が、よりによって今日はやけに耳障り。
「有村さん、本日はよろしくお願いします」
あぁ……会いたくなかった…。
有村さんを見ると、更に情緒不安定になりそう。
だけどそんな顔絶対に見せられない。
笑顔で挨拶をすると、有村さんもいつものように可愛い笑顔を振りまく。
「及川さん!先日は偶然でしたね」
「あ…はい。お会いして驚きました」
有村さんから篠宮と一緒にいた日の事をふられ、バツが悪い。
ニコニコしているけれど、なんだか目の奥が笑っていないようで。
「それでは簡単に打ち合わせをさせて頂いてよろしいですか?」
「はい、よろしくお願いします」
あまり深くも突っ込まれたくないから、撮影チームも呼んで打ち合わせを始めると告げた。
有村さんの持っている華やかさと、可愛らしさからだろう。
周りの空気は緩み、和やかに打ち合わせが進む。
「メイクの準備が出来たらご案内しますので、その間再度商品説明をさせて頂きますね」
「はい。よろしくお願いします」
みんながバタバタと撮影準備を行っている間、有村さんへコンセプトや伝えてほしい事など、新商品"ジュエルライン"の魅力をツラツラと並べる。
「ご質問はありませんか?」
「商品の質問はないんですけど」
え?
予想外の返答に間抜けな顔をしていただろう。
そんな私と目が合うと、有村さんはニコッと笑った。
「もしかして壱哉君と、及川さんって付き合ってます?」
周りに聞こえないように、コソッと聞かれた。
最初のコメントを投稿しよう!