嘘だらけの恋

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早く撮影が始まって欲しい。 担当を変えれば良かった。 仕事に向き合う気持ちとして間違っている事は分かっているけど、有村さんとこれ以上話していると態度に出てしまいそう。 「メイク準備遅いですね。お待たせしてすみません。様子を見て来ますね」 「全然大丈夫ですよ! 及川さんと色々お話したいですし」 ──ネガティブな感情には敏感なのにね。 有村さんに無垢な笑顔を向けられているはずなのに、篠宮の言葉が浮かんだ。 毒のような、一撃で致死量に達してしまうかのような、胸騒ぎを感じたから。 「昨日、及川さんから壱哉君に電話があったから、不安になってたんです」 ─────え? いつもより激しく、鼓動が鳴った。 嘘……。 まさか、昨日の電話の声って───。 「壱哉君に"会いたいから"って呼ばれて、一緒に飲んでたんですけど、すごく酔っ払っちゃって。 なんとか家に一緒に帰ったら、及川さんから着信があって…」 ───もしもし? 電話の向こうから聞こえた、甘い声。 パリン、と心の中で何かが壊れた音がした。
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