4320人が本棚に入れています
本棚に追加
小さい有村さんは、上目遣いでじっと私を見上げている。
"会いたいから"って……。
ああ、そう……。
やっぱり、誰にでも言うんだ。
酔った時って本音が出るから、篠宮の本心だったらいいな…なんて、勝手に期待してしまった。
私だけに言ってたわけじゃないのに、一人で舞い上がって、篠宮が来るのを待ってたなんて、なんて哀れなんだろう。
こんなにもショックは大きいのに、取り乱せるはずもなく、自分の馬鹿さ加減に呆れて笑いが出る。
「…実は、篠宮から酔っぱらって電話がかかってきてたんです。あんなに酔ってるのは初めてだったので、ちゃんと帰ったのか心配だったんですけど……心配なかったですね」
「はい」
ニコッと余裕たっぷりに、少し首を傾げて微笑む有村さん。
もう、打ちのめされて頭がうまく働かない。
だけど、傷ついてないふりをしなきゃ。
「邪魔してしまったみたいで、すみません」
「いいんです。
私こそつい不安になっちゃって、すみません。壱哉君、モテるから心配なんです」
心が必死に、これ以上壊れるのを防ごうとしてるのに、有村さんは喋り続ける。
「でも。昨日すごく可愛かったんですよー」
「…え?」
「見ます?寝顔。こっそり写メ撮ったんです」
幸せそうな笑顔で、有村さんがスマホをタップする。
──やだっ…!
私が反応するより早く、有村さんがディスプレイを向ける。
そこには、シャツのままでベッドに眠る篠宮が写っていた。
最初のコメントを投稿しよう!