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「いらっしゃいませ」
若いのに、ちゃんと教育を施されたであろうウエイターが、品の良いお辞儀をする。
店内の洗練された雰囲気に少し緊張しながらも、予約名を伝えると「ご案内します」と、歩き出す。
すぐに視界は開けて、大パノラマの夜景が飛び込んで来る。
レインボーにライトアップされた大観覧と、重なるビルの灯りが宝石のようにキラキラと輝く。
こんな気持ちじゃなかったら、どんなにロマンティックだっただろう。
1歩、1歩と歩く度、心が掻き乱される。
篠宮に会いたいようで、会いたくない。
どうしていいのか分からないまま、ここへ来てしまった。
「お疲れ」
テーブルへ着くと、篠宮が私を見てホッとしたように笑った。
それだけで、泣きそうになってしまう。
ウエイターがイスを引き、エスコートに促されるように座ると、予約しているコース料理の確認と説明をしてくれた。
私は上の空で、ただ流れる声を聞いていた。
これから、私達の関係はどうなってしまうんだろう。
篠宮の言葉を聞くのが、怖い。
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