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ウエイターが席を離れると、さっきまで笑っていた篠宮から笑顔が消える。
「昨日、ごめん」
申し訳なさそうに目を伏せる。
聞きたい事は山ほどあるのに、何から言えばいいのか分からず、声に詰まる。
「…覚えてるの?」
「電話した事は覚えてるよ」
「電話した事は…って、他は覚えてないの?」
篠宮がバツが悪そうな顔をする。
「昨日、長谷部達と飲んでたんだけど、途中で須田がいつの間にか人呼んでけっこう大人数になって。
ゲームをする事になってやってたんだけど、ボロ負けして飲まされて…」
「だからあんなに酔ってたの?」
「うん」
今日も二日酔いなのか、本調子じゃなさそうな篠宮。
「及川に電話して店に戻ったら、最後にゲームやっていけ!って須田に絡まれて、また飲んだんだけど…そっから記憶ない」
「え?」
「酔いつぶれて寝てたらしい…ごめん」
これは、どういう事なんだろう。
どこまでが本当で、嘘なのか。
須田君が呼んだ人達の中に、有村さんがいたんだろうか。
それとも、篠宮が「会いたい」と呼んだんだろうか。
有村さんの言葉がチラつくせいで、疑念ばかりが浮かんで、篠宮の言葉に納得できない。
「…ちゃんと家に帰れたの?」
「あー…、須田達が送ってくれたらしい」
「須田達?」
「須田と、営業の北村」
男の人2人……だけ?
有村さんは、一緒に帰ったって言った。
これって"記憶がない"ってごまかされてるの?
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