4321人が本棚に入れています
本棚に追加
私はただ不安を消したいだけなのに、どんどん疑心暗鬼になっていく。
電話から有村さんの声がした。
何処なのかは分からないけれど、ベッドで眠る篠宮の写真もあった。
だから、有村さんといた事は事実なのに。
「…じゃあ、篠宮は1人で家で寝たの?」
馬鹿げてる質問だと思う。
だけど、篠宮が言うように泥酔してたのなら、記憶がないのかもしれない。
須田君達が送った時に、もしかして有村さんも一緒にいて、部屋に入ったのかもしれない。
それに、会社のメンバーと飲んでたんだから、私が誰かに聞けば嘘か本当かすぐに分かる話だ。
そんな見え透いた嘘を、つくとは思えない。
だけどいくら記憶が無くても、今朝の記憶はあるでしょ?
目覚めた時に、一緒にいたんじゃないの?
どんな状況で、そうなったの?
ちゃんと説明してくれたのなら私は──。
「うん」
篠宮は表情も変えず、平然と言った。
あぁ、そう……。
そうなんだ。
篠宮を信じたいという気持ちが確実に壊れるのを感じながら、ハハッ…と力なく笑った。
嘘つき──。
「昨日は行けなくて、本当にごめん」
篠宮は心から謝っているように見える。
1人じゃなかったでしょ?
やましい事だったから、言えないんでしょ。
問い詰める権利もないくせに、嘘はついてほしくないなんて思ってる私がバカだった。
最初のコメントを投稿しよう!