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「菜月、次だよ」
緩んだ空気のせいか、ふいに聡君が名前を呼んだ。
久しぶりに呼ばれた名前に、心臓を撃ち抜かれたけれど、平然とカウンターへと向かう。
「えっと…クロワッサン2つとカフェオレを下さい」
いや、無理!
嬉しすぎてニヤけてしまう!!
にこやかすぎるスマイルで注文する私の隣に、聡君が立った。
「あと、コーヒーひとつ。
お会計は一緒に」
「え!いいですよ!」
「頑張ってるご褒美」
ふわりと私を見て微笑む。
あぁ、好きだ。
どんなに消そうとしても、この気持ちは消えてくれない。
「ありがとうございます」
「いえいえ」
トレーを持ってレジから離れると、お礼を言った。
「じゃあ。没頭して始業時間に遅れないようにね」
「そんな事しませんよ」
フフッと2人で笑う。
本当に久しぶりの穏やかな時間が、この上なく嬉しい。
このまま、また戻れたらいいのに。
戻ってきてよ、聡君。
そんな溢れだす思いを抑える事ができず見つめると、聡君も私と視線を合わせた。
「おはようございます」
喧騒の中、現実に引き戻される甘い声。
同僚達とトレーを片付けに来た江名が、そこには立っていた。
私と目が合うも、ニコッと可愛い顔で笑って会釈する。
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