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「おはようございます。それじゃあ…」
「あぁ」
微妙な空気になり、私は挨拶をすると逃げるようにこの場を離れる。
周りの社員達が、チラチラと野次馬のように私達を見るのが分かった。
「今日、14時って覚えてます?」
「インストールに来るんだよね?」
「うふふ。ちゃんと覚えてましたね。後で山田と伺いまぁす」
付き合ってるんだからさ、事前に打ち合わせしとけよ!!
背後から聞こえてくる江名の間延びした声に、久しぶりの聡君との時間を壊された苛立ちから、心の中で叫ぶ。
って、あぁ…。
今日もまた江名が部署に来るのか……。
そういえば、先週言われたな。
げんなりしながら、窓際の一人用の席へ座った。
「苦っ……」
甘いはずのカフェオレが苦くて、動揺してシュガーをとり忘れた自分に「何やってるんだよ」とため息をつく。
あーあ。
また江名という存在に打ちのめされ、気力がなくなってしまった。
手にした雑誌をパラパラとめくりながらも、全然頭には入ってこなくて、思い浮かぶのはさっきの2人の姿。
「もう絶対に社内恋愛はやめよう」
思わず、独り言が漏れた。
戻りたいと思ってみたり、もう止めたいと思ってみたり。
気持ちが不安定すぎて、自分でもどうにもならない。
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