ありのままで

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いつも周囲の誰かや、社会から求められる"いい自分"を演じて来た。 そしていつしか、自分の心の声まで聞こえない振りをして、素直な自分を認める事が怖くなった。 だけど、いいんだよね。 私はもっと自分の気持ちを大切にして、もっと篠宮に甘えて。 そしてそれを、篠宮も喜んでくれるのなら。 お互い見つめ合って、照れたように笑うと、篠宮が「行こうか」と言った。 「…二次会行くの?」 「行かない。2人でいたいし」 隣を歩く篠宮は、また可愛い事を言って、私をときめかせる。 「私も」 そんな彼に触れたくなって、思わず腕に絡まると、ふわりと甘い香りがした。 「だから……。 さっきから俺を翻弄しないで…なっちゃん」 「え?」 「はー、駅まで遠い。 あそこにホテルあるよ?」 「えぇ?!行こうかって、そこ?!」 「"どんと(こい)"って、ホテルが呼んでる」 「ふざけたネーミング」 2人でクスクスと笑いながら、寄り添ったまま篠宮を見上げる。 「また、うちに来る?」 素直に気持ちを伝えて、良かった。 口を閉ざしたままなら、今こうして篠宮の隣にいる事は出来なかったのかもしれない。 そんな事を思いながら篠宮を見つめると、優しく笑って「うん」と言った。 甘くて幸せな感情を胸いっぱいに抱えながら、篠宮と寄り添い、夜の街を歩く。 ビルの隙間から時折見える大きな月が、いつになく綺麗だった。
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