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怖いと思っていた山を思い切って飛び越えてみれば、想像以上の世界がそこにはあった。
目の前の出来事を、高くそびえ立つ山にして"越えられない"と決めてしまうのは、自分の心なんだ。
「ん…」
篠宮を部屋に招き入れるなり、自然と唇を重ねた。
愛しくて、愛しくて。
この甘い感情に支配されたまま今にも堕ちそうだけど、ブラウスのボタンに手を掛ける篠宮を辛うじて保っている理性で止める。
「待って、待って…」
「んー……なんで?」
「シャワー浴びてから…」
「一緒に入る?」
顔を近づけたまま、悪い顔をしてニコッと微笑む。
「は い ら な い」
「はいはい、1人で入りますよ」
体を離した篠宮は、ぶつくさ言いながらもゴキゲンだった。
………可愛い。
私が先にバスルームへ行くと、ちゃっかり乱入して来そうだから、先に篠宮にシャワーを浴びてもらった。
堂々と上半身裸で出てきた彼にドキッとさせられたけど、湯冷めもしちゃうだろうからメンズサイズのTシャツを渡して、入れ替わりにバスルームへ入った。
別にカマトトぶる訳ではないが、いくら年齢を重ねようが、一度肉体関係を持っていようが、やっぱり緊張はするもので、ドキドキしながらシャワーを浴びた。
そおっとバスルームを出てリビングに戻ると、テレビはついているものの、篠宮はソファーに座ってスマホを触っていた。
だけど、たまたま流れたGENICのCMに反応して、顔を上げる。
テレビに釘付けになっている篠宮が嬉しくて、思わず笑みが溢れた。
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