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少し細身の白いシャツにネイビーのパンツ。
腕まくりをした袖から見える腕には、いつも着けているブラウン革のベルトのシンプルな時計。
夏はノーネクタイだし、なんのこっちゃないシンプルなオフィススタイルなのに、どうしてこんなに格好良く見えてしまうのだろう。
絶対に私の目には、加工フィルターがかかっている。
文香とランチに出ようと、エントランスで待ち合わせしていると、篠宮達も外に出るようで遭遇した。
目が合ったからはにかむと、篠宮も口角を上げる。
あぁ…カッコイイ!
心の中で悶絶していると「菜月って、そんなに表情管理出来ない人だったっけ…?」と、目を丸くした文香がいつの間にか立っていた。
「文香…!」
見られていたなんて、恥ずかしい!!
「……もしかして、私ニヤニヤしてた?」
「してた。クールビューティーな及川さんはどこ行っちゃったのかなー」
そういう文香こそニヤニヤしながら、私の腕を小突く。
思わず熱を持った頬を両手で隠すと「ま、行こうよ」とクスクス笑う文香に促され、2人で歩き出した。
篠宮とは、お互い仕事がやりづらくなるから、交際している事は秘密にしておく方向で意見が一致した。
同期会のニ次会に揃って参加しなかった事は、文香と長谷部君が適当に誤魔化してくれたらしいし、「篠宮と付き合ってるの?」なんて誰からも聞かれない。
恋人同士になって2週間ちょっと。
びっくりするくらい穏やかな日々だ。
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