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エレベーターを待ちながら、ふと時計を見ると、14時すぎだった。
そうだ。
今から部署に戻っても、江名がいるんだった………。
江名ダメージはずいぶん響いていて、また2人を見るだけの心の余裕なんてない。
「……杏璃ちゃん」
「はい?」
「私、ちょっと佐々木さんに伝え忘れた事があるから、先に帰っててくれる?」
「了解です!」
ごめんね、杏璃ちゃん。
今だけは、弱くて情けない先輩を許して…。
エレベーターに乗った杏璃ちゃんを見送ると、屋上へと向かった。
新システムの入れ替えさえ済めば、江名はうちの部署には来なくなる。
もう少しの辛抱、もう少しの辛抱……。
長くて暗いトンネルから抜ける道は必ずあると言い聞かせながら、屋上へ行く為にオフィスより少し離れたエレベーターへと向かう。
屋上は開放スペースとして、緑とベンチが少々設置されているが、ほぼ人が来ないのは、部署からは遠いし面倒くさいからだ。
私だって入社以来、片手で数える程しか行った事がない。
それに、この大企業ではオシャレな社員食堂、カフェスペース、休憩スペースなど、充実箇所が沢山ある為、天敵の紫外線に晒されてまで、屋上に行くメリットがそんなにないのだ。
だけど今は、それが良かった。
人が来ない逃げ場所があるのは、気持ち的に全然違うな、なんて考えながらフロアを曲がると、エレベーター前にいる男女の姿が見えて、思わず隠れた。
げえっ!篠宮じゃん!!
またアイツ!私の邪魔してっ!
あぁ…エレベーターまでもう少しなのにぃぃ!!
ここまで来たのに、行く手を阻む篠宮の登場に地団駄を踏む。
また階段まで戻って別のフロアからエレベーターに乗ろうか、どうしようかと考えていると、女の声が聞こえてきた。
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