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壁に張り付いたまま、恐る恐る視線を上げると、篠宮がいつの間にか立っていた。
「"実録・アナタはこうして騙される!"を見ていました…」
「おい、あの詐欺師を追うテレビ番組に俺を例えるな。
だいたい騙してないし、最初から好きだなんて言ってないし」
「体の関係は持ったんでしょ?」
「はぁ。だって誘われたし」
ものすごーく面倒くさそうに言った。
そういうのをクズと言うのよ、篠宮。
「……さっきの女の人は?」
「帰ったよ」
「ヒドい男。いつか刺されるよ」
冷めた視線を送ると「そうかもね」なんて、軽い口調で返された。
全くもって、行いを変える気などないらしい。
「で。及川はまた江名ちゃんが部署に来て、肩身が狭くて屋上へ逃走中?」
「うるさいな!」
思わずムキになると、篠宮はまたからかうのが楽しかったのか、意地悪な顔をして笑った。
どうしてですか、神様。
篠宮とそんなに顔を合わす事がなかったのに、なんでここに来てこんなに遭遇させるんですか。
よりによって、私の情けない姿を見られた会いたくない人物なのに!!
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