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「私達はお互いキレイに別れてるから。
未練もないし、仕事にも支障ないから安心して」
「さすが、大人ですー」
菜月さん、カッコイイ!なんて、杏璃ちゃんが何故か目をキラキラさせる。
また笑顔が引き攣る。
「私、菜月さんと樋口課長は美男美女で本当にお似合いだったから、別れちゃった事が残念なんですけど、もう菜月さんに未練もないのなら仕方ないですよね」
「まぁ、そうね」
どの口が言ってるんだ。
辛くてたまらないのに。
「菜月さんなら、選り取りみどりですよね」
杏璃ちゃんはそう言うと、自分の席に着いた。
大手化粧品会社・フィールに就職して10年。
上司でもあり、恋人だった聡君に、1ヶ月前「別れたい」と突然言われた。
うまくいってると思っていた私には青天の霹靂で、理由を問い詰めると、他に好きな人ができたと言われた。
それが、情報統括部のアイドル、江名みくる。
40過ぎのおっさんが、若い子に血迷っただけだろうと思っていたけれど、江名と聡君が付き合い出したという事実を聞いて、愕然とした。
お互い、こうして仕事で関わるうちに、私に隠れて恋愛関係となっていたんだろう。
私は、何も知らなかった。
何も気づいてなかっただけに、余計に惨めな最後だった。
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