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「脅迫じゃない!卑怯者!無理!」
「あ、そう。じゃあ黙っておいてあげるかわりに、一晩過ごそうって言った方がいい?」
「ふざけるな!」
駄目だ、話が通じない!
何か反撃する方法を考えなくては…!
と、思考を巡らせている間に、ハッとある事に気づいてしまう。
「超優しいじゃん、俺。
口止め料に、失恋した人の気持ちを教えるだけなんて、この上なく簡単な事だろ?」
そう……、そうだった。
コイツは目的の為に相手を思いのままに操る天才なんだった!
篠宮はきっと、私が人前で弱音を吐かない事を知ってるから、面白がってる。
惨めな気持ちを晒すのなんて、屈辱以外の言葉が見つからない。
強がってる私が、どんどん崩れていく様を見るのが楽しいんだろう。
「じゃあ、19時30分に社員駐車場ね」
「勝手に決めないでよ!」
「朝、用事があったから車で来てたんだよね」
「ねぇ、聞いてる?私、行かないから!」
必死に抵抗する私。
クールな及川はどこへやら。
ギャンギャンとはね返す私に、篠宮がズイッと顔を近づけてきた!
ひっ!!
距離が近い!!!
キレイな顔!
………って、そんな事に感心している場合ではない!
「お前に選択権なんてないだろ?
ちゃんと状況理解してよね?及川さん」
ぐっ……
悔しいぃぃぃぃ!!!
わざと甘い声で脅すと、可愛い顔をした悪魔は勝ち誇ったように笑った。
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