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何も言い返す事が出来ずに、睨みつける私を意に介す様子もなく
「じゃ、19時半に遅れるなよ。楽しみだなー」
ニヤリと笑うと、壁についていた手を離して去って行った。
……………。
…………………。
どうしてこうなってしまったんだろう。
あんな男に弱味を握られてしまったから…。
よりによって、篠宮なんかに。
篠宮なんかに………。
後ろ姿が見えなくなると、力が抜けて、ずるりと壁によりかかったまましゃがみ込んだ。
思いのほか、激しく動いている心臓の音に自分で驚いてしまい、胸に手を置いた。
この動悸は、至近距離でイケメンに迫られたからなのか、脅された恐怖からなのか、不安からなのか、よく分からない。
ただ、これだけは分かる。
篠宮はやっぱりクズだったという事…。
深く息を吸って呼吸を整えると、ふらふらと立ち上がる。
篠宮が本当に私の事を社員達に言うのかと聞かれたら、人を陥れたりはしない人間だから、恐らく言わないとは思うけれど……
自信がない!!
なんせ篠宮は、何を考えているのか分からない。
読めないからこそ、体裁が大事な私は従うしかない。
もういいや。
篠宮のオモチャにされて、からかわれるのも、今日を乗り切れば終わるのだろうから。
適当に話を合わせて、本心を悟られなければいい。
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