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2人で適当に注文して、お酒が運ばれてくると「お疲れー」と篠宮が言って、カチンとグラスを合わせた。
2人で赤のグラスワインを口にする。
「警戒心バリバリだね」
篠宮が私を見てクッと笑う。
「及川って、疲れない?」
「は?」
突然の突拍子もない質問に、間抜けな声が出る。
「なんかねー、無理していつも作ってるって感じ。いい自分を」
篠宮が鋭い目でジッと見つめるから、ギクッとして、思わず目を逸した。
あぁ、だから苦手なのよ篠宮って。
本当の自分を見抜かれそうで。
私が保っているものを壊されそうで。
「無理なんてしてないんだけど」
笑ってみせる私は、篠宮にどんな風に映っているんだろう。
「たぶん、そんなだから樋口さんも疲れるんだよ。相手に気をつかわれると、自分も気を抜けないから疲れる」
…………………え?
篠宮が平然と言い放った言葉に、一瞬、理解が出来なかった。
何言ってんの?
なんで、こんな事をコイツに言われなきゃいけないの?
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