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「好きな人に良く思われたいのは普通でしょ?
社会で生きてる以上、多少なりとも自分を作る人は多いんじゃない?」
私の最も突かれたくない所を突かれて、顔が引き攣る。
うまく笑えてるのかな、私。
誰の前でも、うまく笑えてた自信があったのに。
篠宮には通用しない気がして、内心穏やかじゃない。
「そうじゃなくて。
じゃあさ、例えば彼氏が"合コン行っていい?"って言われたら、及川はどうする?」
「どうぞ行ってきてって言うよ」
「本音は?」
「本音はちょっとムカつくし、行ってほしくないよ。だけどそんなちっさな事で怒ると器の小さい人間でカッコ悪いでしょ?」
はっ!!!
何ペラペラと本音を導き出されてるんだ!
もう、嫌だ!
コイツと話していると、ペースを持っていかれて調子が狂う!
「江名ちゃんは"行かないでほしいなぁ"って言うタイプだね」
「だから何?」
サラリと嫌な事を言う篠宮に対して、満面の笑みで対抗したものの、更に笑顔は引き攣る。
はぁ……腹立つ。
そんなの分かってるわよ。
私がプライドだけ高くて、可愛くない事なんて。
中身が伴っていないのに、大人のカッコイイ女を演じてるだけ。
だけど、そんな"スマートな大人"の私を、聡君は好きになってくれたんだもん。
1年半の交際期間の中で、我慢した事なんて沢山あるけれど、醜い部分を見せて嫌われたくなんてなかった。
「あのね、ケンカになるような事をわざわざ言わないでしょ」
「別に悪いんじゃないけど、そんなの上辺だけ上手くいってるように見えるだけで、それ以上になれないんじゃねーの?」
グッと唇を噛みしめる。
……上手くいっていると思っていた私。
やっぱり篠宮は痛い所を突いてきて、ズキズキと心が痛くなる。
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