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赤い目のまま顔を上げると、篠宮はニヤッと笑った。
あぁ……そうか…
そういう事だったの。
あえて私の怒りが爆発するように仕向けたんだ!!
「わざとでしょ!!」
「そうじゃないと言わないだろ?」
「あーもう!ムカつく!」
ヤラれた!!
やっぱりコイツは、弱音を吐かない私が崩れていくのを楽しんでるんだ!
どうして篠宮のペースにまんまとハマってしまったんだろう。
早く涙を止めなきゃ、またバカにされる!
「お前さ、もっと心のままに生きたら?」
───え?
私の予想に反して、篠宮は眉を下げて呆れたように笑った。
その顔が優しくて、一瞬何が起きているのか理解できなかった。
"美人で仕事も出来て完璧ね"
"クールでカッコイイね"
イメージを壊さないように、聡君に相応しいように。
仕事も努力して、見た目にも気を使って、傷ついても、辛くても、泣き言なんて言わずに何食わぬ顔をして。
社会から、恋人から、求められる自分になれるように頑張ってきたんだけれど………。
篠宮の言葉が、じわじわと水が広がるように心に染みていく。
私は一体、誰の為に生きているんだろう。
「ほんとだね。
"あなたらしさ"を守る為に、生きているんじゃないのに……」
号泣してしまった。
いつも揶揄ってばかりなのに、なんであんたがそんな事言うの。
なんで誤魔化し続けてきたものを、見つめさせるの。
会話が途切れた今、個室には私の鼻をすする音だけが響く。
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