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「そーですよ。本当は口も悪くて、いつまでもネチネチ思い続ける弱い人間ですよ」
「いいんじゃない?
俺はそっちの方が好きだけど」
…………は?
眉間に皺を寄せる私に、ニコッと可愛い顔で笑う。
「………頭おかしいの?」
「よく言われる」
思わず笑ってしまった。
「お待たせしましたー」
ちょうど注文したワインが運ばれてきて「まぁ、飲もうぜ」と言って、篠宮がカチンとグラスを当ててきた。
スーツ姿のイケメンがワインを飲む姿は、悔しい程に様になっている。
無駄にかっこいい篠宮を見ながら、こんな自分を「いい」と認めてくれる事が、自信を無くしてしまった私は嬉しかった。
いつもガッカリされてたのにな。
見た目と中身が違うって。
「………」
またじわっと涙が浮かんできた。
なんだろう、この気持ち。
「泣きたきゃ、泣いとけよ」
「もう泣かないし!」
「あっそ。
泣かないならいいけど、1人で泣くなよ」
ダーッと、涙が溢れてきた。
「そういう事言わないでよ!」
くそー、篠宮なのに!
ぶっきらぼうな優しさに胸が熱くなる。
屋上で情けない姿を見てしまって、からかいたかったのか、暇つぶしなのか、同期のよしみで手を差し伸べたのか、本心は分からないけれど……。
もしかしたら、私の心が破裂する前に助けてくれたのかもしれないな。
今日は、そういう事にしておこうか。
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