女帝の格言

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「えーっと…。 そんな人間、1番嫌いです」 言葉を選ぶもなにも、ものすごくストレートにシャットダウンしてしまった。 関谷さんが鋭い眼光を放ちながら、私を見る。 「ねぇ。あんたさ、選り好みしてる場合じゃないのよ?」 「痛い所を…」 「いくつになったの?」 「32歳です…」 つい、小声になる。 「あんたみたいな美人で強そうな女に声をかけてくるのは、自分に自信のある男か、変わり者くらいしかいないのよ」 「え?どうしてですか?」 「まず普通の男は"自分では手が届かない"と思うから大抵諦めるの。 自分の置かれてる状況分かってるの?」 ……なんですって? 「20代でチヤホヤされてきた女ほどその感覚から抜け出せず、30代になってもプライドだけは高くて、自分からは告白できない。 美人でプライドだけ高くて可愛げのない30代に言い寄って来る人間なんて、そうそういないって事に早く気づくべきね」 カンカンカンカンカーーン! アッパーパンチからのKO。 ゴングなってます。 「せ、関谷さん…ダウンです」 「もう待ってるだけじゃ掴めない年齢って事よ」 カラカラと笑う関谷さん。 ………そうかもしれない。 確かに過去の男性を思い出しても、思い当たる節が数々有る。 自分のことを分かっていたようで、分かってなかった! 「どうしてこんな事言うかって? それは、かつての自分がそうだったからよ」 え? 「そうなんですか…?」 「そうよ。気づいてからはどんどん自分から動くようになったんだけどね」 関谷さんは「もっと早く気づいてたら良かったなー」と笑って、髪の毛を耳にかけた。
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