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「なんだか及川は、自分と似てる所があって、昔から気になっちゃうのよね」
──私らは強くて1人で生きていけると思われてるからね。
私から見た関谷さんは、強くて美しくて仕事も出来て……。
私も世間から見れば同じなんだと思う。
関谷さんは結婚をせずに、管理職としてバリバリ働き、お金もあるし、休暇は海外に行ったり自由に生きているようで憧れる。
だけど世間からはそうは見えても、見せないだけで、人知れず苦労した事も多々あるんだろうな…と、おこがましくも自分と重ねてしまった。
「心に土足で入り、自信があって、変なヤツですか……」
篠宮がピッタリすぎて顔が浮かんだが、慌ててかき消した。
あの大泣きした日から一週間。
結局、篠宮の連絡先は知らないままだし、職場でも顔を合わせる事もなく、ほっとしているような、少し寂しいような。
失恋の痛みは変わらないけれど、新システムの移行が完了した為、江名がうちの課に来る事がなくなった。
聡君とは普通に話せるようになってきて、久しぶりに穏やかな日々が過ごせている気がする。
「ねぇ。及川の事だから、まだ樋口君の事引きずってるんでしょ?」
ズバッと言われる。
敵わないなぁ、この人には。
関谷さんが上司の時は、飲みに行ったりして、前の彼氏の事も相談したり、アドバイスをもらったりしていた。
恋愛になると途端に女々しくなる私の性格は、バレているはずだ。
「まぁ、そうです…」
「そんな事だろうと思ったわ!それは数年引きずるパターンね」
「笑えません」
豪快に笑う関谷さんの対面で、苦笑いしながらお茶を飲む。
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