女帝の格言

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制作会社(C L I P)の人達と一緒にいるわね。打ち合わせかな」 「そうなんでしょうね、ハハハ…」 篠宮と目が合う前に、体を関谷さんの方へ戻す。 ここは、打ち合わせもできるスペースも設けられているから、利用する社員も多いのだ。 「こっちに来ないでよ」と心の中で祈りながら、ランチを口にするも、変な緊張からなんだか味がしない。 関谷さんが変な事を言うし、そして冷静にふり返ると号泣事件がこの上なく恥ずかしくなってきた。 だけど、ここで働いている限り、いつかは顔を合わせなければならない。 越えなくてはいけない壁!! だけれども…! 「あれ、関谷さん。お疲れ様でーす」 キターーーッ!! いつものように軽ーい口調の篠宮の声が背後からするが、振り返れない。 「お疲れー。これはこれは、田辺さん。お世話になります」 「関谷さん、ご無沙汰してます」 あぁ、もうダメ。 関谷さんもCLIPさんへ挨拶している以上、社会人として挨拶しなきゃ……。 「田辺さん、お久しぶりです」 「あれ!及川さんでしたか!」 立ち上がり、以前一緒に仕事をした田辺さんの方へと顔を向けると、隣に立つ篠宮が当然視界に入る。 目を合わせないよう、完全仕事モードの笑顔を貼り付けた。 勝手にヒヤヒヤ、ドキドキしている私。 どんな顔をして、どんな事を篠宮に言えばいいのか分からない。 「GENICも好調のようで」 「おかげ様で。ありがとうございます。 今日はCMの打ち合わせですか?」 「はい。ナテュールの担当になりまして。篠宮さんにお世話なってます」 「そうなんですね」 アハハ…と話の流れから仕方なく篠宮の方を見ると、ニヤッと笑われた。 どういう笑顔よ、それ。
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