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「篠宮はね、分かりにくいようで、分かりやすい男だから」
「そうですか……?」
うーん?
私には何を考えているのか全く分からないけれど。
「好きな子には絶対イジワルするタイプだわ」
「子供じゃないですか!」
思わず飲んでいたお茶を吹き出しそうになる。
「だからね。それって本当の気持ちを押さえてるから、反対の行動になるの。
仕事の事もさ、色々と悔しい思いしてるのよ。でも"気にしてませーん、実際俺カッコイイんで!"って言って陰ではめちゃくちゃ努力する。そんなヤツね、篠宮って」
仕事の事は分かるけれど、篠宮の恋愛事情ははっきり言って分からない。
私から見れば、篠宮ってそれこそ"心のままに"生きてるように見えるけれど。
アイツが気持ちを抑える事なんてあるのかな。
関谷さんが箸を置くと同時に、タイミング良くスマホが鳴った。
「あぁー、副社長だ。なんだろ」
関谷さんはスマホを取り「分かりました。戻ります」と言って、すぐに電話を切った。
「ごめんね、戻らなきゃ」
「お忙しいですね」
「及川と久しぶりに話せて良かったわ。
これからもGENICを頼むわよ」
ニコリと微笑む。
「それとね。弱さを見せるという事は相手との心の壁がひとつ無くなる事なのよ。
覚えておきなさい」
ポンッと肩を叩くと、カツカツとヒールを鳴らして颯爽と去って行った。
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