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ざわざわとした喧騒の中で、1人ぼんやりと考える。
強くてかっこいい関谷さん。
弱さなんて無縁に見えるけれど、そんな関谷さんから言われた事で余計に心に響いた。
人には見られたくないものが弱さの一つだとしたら、私は間違ってしまった。
聡君との間に高い高い壁を作ってしまって、本当の心がお互い見えなかったのだ。
篠宮に言われた言葉と、関谷さんが言った言葉が繋がる。
形ばかりスマホを触ってみるが、関谷さんの言葉を反芻するばかり。
襲ってくる後悔の波。
淋しさから無意識にメッセージアプリを開くと、聡君とのトーク画面を見つめた。
"好きだよ"
まだ消せないメッセージ。
どんどんと暗く、沈んでいく気持ちに抵抗するように、はぁっと息を吐き出すと天井を見つめた。
もし聡君とやり直せるのなら、もっと素直になりたい。
もっと、私は努力するのに…。
どんなに胸が痛んでいても、休憩時間は無情にも終わってしまう。
気持ちが重いと、体まで重くなってしまうが、パウダールームへ行く為仕方なく立ち上がった。
カウンターへトレーを戻しに行くと、「及川」と背後から名前を呼ばれた。
声の主が分かった私は、少し体が硬直してしまう。
振り返ると、予想通り篠宮がいた。
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