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鼻歌を歌いながら、スマホに素早く私の番号を入力する篠宮。
「こうして言葉巧みに商談先も女も落として来たのね」
「まぁね。この見た目だしねー」
イヤミを言っても、いつものように飄々と返された。
また言ってる。
私はアンタの真っ黒なノートを見てるんだって。
「篠宮が努力家なのは知ってるよ」
私の反応が予想外だったのか、笑っていた篠宮の表情がピクリと一瞬固くなった気がした。
「は?俺が1番嫌いな言葉努力なんだけど」
いつものように軽い口調だけれど、私も彼の裏側を知ってるせいか可笑しくてクスッと笑った。
「……何笑ってんだよ」
──篠宮はね、分かりにくいようで、分かりやすい男だから。
またさっきの関谷さんの言葉が浮かぶ。
篠宮が何を考えているのか分からないのは、私が彼に関心を持ってなかったからなのかもしれない。
こうしてみると、不服そうな篠宮がちょっと可愛い。
恥ずかしいのよね、きっと。
「別に〜」
「分かってる?
この間の出来事は、口止め料の効力がまだ発生してないこと」
笑顔で号泣事件を脅され、緩んだ顔を引き締める。
固まった私の表情を見て満足そうに笑うと「じゃーな」と、田辺さんの方へと戻って行った。
…………。
彼は悪魔なのか、天使なのか。
一体、今度は何をさせられるんだろう…。
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