女帝の格言

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「なるほどね。色落ちしやすいか」 「今の時期は花粉症やウイルス対策でマスクしてる人も多いから、マスクにつかないリップが欲しいと」 デジタルマーケティング部で、商品企画部の担当も交えて、先日発売された新商品の感想や要望を共有する。 売上げや、人気色、口コミ結果から購入者の年齢層まで事細かくデータ分析されている。 商品を褒められるのはもちろん嬉しいが、商品に対しての指摘も大事にしなくては、伸びしろのないものになってしまう。 これをふまえて、次年度の商品企画や今後の戦略プロモーションについて白熱してしまい、定時近くに自分の部署に戻る事となった。 「戻りました」 「あ、おかえりなさい菜月さん。 リーフレットの件でマツオ印刷から電話があったんですけど……」 すかさず、杏璃ちゃんから業務の相談を持ちかけられ、パソコンには「○○さんよりお電話がありました。折り返して下さい」等、付箋が3つ貼られていた。 サンプルを見ながら杏璃ちゃんと商品配置や文言を確認して、それから伝言メモの要件に手をつけると、定時からあっという間に1時間が過ぎた。 「菜月さん!まだ残ります?」 「もう少しで私も帰るよ」 実際は、さっきの資料をまとめておきたくて帰る予定はないが、杏璃ちゃんが帰りづらくなってしまうので嘘をついた。 「そしたらお先に失礼します!」 「お疲れ様」 オフィスにはあと数人しか残っていない。 パソコンに向き直すと「及川さん」と、聡君の声が背後からした。 「はい?」 「まだ残るの?」 「はい。資料をまとめておきたくて」 「じゃあ、時間外申請出しといてね。忘れてる」 あ!忘れてた! コンプライアンスが重視される今、残業をする場合は課長に事前申請しなくてはならない。 「すみません!今すぐ申請します」 聡君は「忘れるなんて、珍しい」と言ってハハッと笑う。
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