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どんどんと社員が少なくなる中、私達の会話は止まる事なく、分析結果のデータを見ていた聡君が呟く。
「そうだなぁ。それなら店舗の方にも聞いてみる?」
クルクルとボールペンを回しながら、思考を巡らせている。
「お疲れ様でした。お先です」
「あぁ、お疲れ様」
残っていた最後の社員が挨拶をした拍子に、指の上を転がっていたボールペンが、パタリと床に落ちた。
「「あ」」
咄嗟に拾おうと手を伸ばすと、聡君も同じように手を伸ばしたものだから、ゴツンと頭をぶつけてしまった。
「いたっ!」
「ごめん、大丈夫?!」
ふわりと、頭に置かれた手。
至近距離で、私を見つめる目。
オフィスの中には、2人だけ。
取り戻したかった温もりが今、目の前にある。
「大丈夫?痛い?すごい音がした…」
聡君がなでなでと頭を撫でる。
久しぶりに触れられた温もりに、溢れだしそうな気持ちを押し殺すと、胸が酷く痛んだ。
「…大丈夫」
なんとか笑顔を作ると、声が少し震えていた。
ねぇ、聡君。
私は、いつになれば鎖を外す事ができるのかな。
それとも、ずっと気持ちは繋がれたまま生きていくのかな。
自信がない。
あなたへの気持ちを捨てられる、自信なんてない。
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