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愚痴を言ったり、仕事の話をしたり。
篠宮のトークスキルのおかげなのか、意外と相性が良いのか分からないけれど、話は尽きないもので、あっという間に日付が変わる頃になった。
店を出て、いつもより活気のない平日の夜の街を、2人で歩く。
人通りは少ないのに、大衆居酒屋の提灯が赤々と灯され並んでいるだけで、賑やかに見えるのは不思議だ。
「お前、けっこう大食いだな」
「自分でもビックリよ」
「なんだよ、それ」
篠宮がこっちを向いて笑う。
「元気になる為には必要なのかも。満たされるものが」
「美味しいものが?」
「まぁ、食欲は満たされた」
「食欲だけかよ」
それだけじゃないけど。
「気持ちも楽になったよ」
篠宮には変な気を使わずに済むから、言いたい放題だ。
「心が回復しなくちゃ、前向きになんてなれないんだって」
「By関谷?」
「何で分かった?」
「言いそう。関谷さんに女帝語録作ってもらえば?」
毎日持ち歩こうかな、なんて言ってると、駅が見えてきた。
「俺が癒やしてあげようか?」
「言うと思った」
「荒治療だけど」
「癒やしじゃないでしょ、それ」
ハハッと、急にあどけない顔で笑う。
けっこう可愛いのよね、こういう顔。
あまり意識した事がなかったけど、無邪気に笑う篠宮の顔は好きだ。
……絶対に本人には言わないけど。
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