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篠宮と関わり合うようになって、モテる理由が良く分かる。
「篠宮はどうして恋人を作らないの?」
何でも出来る篠宮なのに。
あえて恋人は作らないのかな。
「理由なんてないけど」
「え?」
「よく聞かれるけどね。
独身主義なの?とか、縛られるの嫌いなの?とか」
「違うの?」
「別に大事にしたいと思える人ができたらそうするし」
えぇーっと?どういう事?
理解が追いつかず首を撚る。
「1人で恋愛はできないんですよ、及川さん」
「分かってるわよ!」
「相思相愛って奇跡だと思うんだよね。
そこまで想える人にまず出会えて、相手も同じ気持ちになるって」
篠宮らしくない事を淡々と言うもんだから、思わず綺麗な横顔に見入ってしまう。
「だからお前は凄いと思うよ。
そこまで人を好きになれるって」
「…そうかな」
「俺からすれば、そんな人に出会えただけで凄いと思うんだけどねー」
春の夜風は柔らかくて、体を刺すような痛みなど無い。
篠宮の言葉は、恋心を否定し続けている自分にとって「出会えただけでも良かったのかもしれない」と、新しい見方をくれたような気がした。
「今は特別だと思える人もいないので、適当に遊んでます」
「ほどほどにね…。
アンタは良くても、捨てられる女は傷つくのよ」
「別に来るものを拒む理由もないし」
「痛い目見るがいい!」
「まぁ、クズだとは自覚してるし」
やっぱり変なヤツ!
「そこまで言うと、ある意味清々しいわ」
そんな篠宮も可笑しいけれど、女の敵なのになぜか篠宮を憎めない自分も可笑しくて、声を出して笑うと、目を丸くした篠宮と目が合った。
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