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「樋口課長と結婚するもんだと思ってたよね。本人達はつき合ってる事、大っぴらには言ってなかったけど、みんな知ってたしね」
「なんか、今回で社内恋愛の怖さを知ったわ。別れたら最悪だよね」
心臓の音が尋常じゃないくらい速くなる。
私が聞いているとは知らない2人は、「ほんと、それな」と、キャハハと楽しそうに笑っている。
「まぁ、相手は江名さんだしね。
なんか、仕方ないかって感じだよね」
「及川さんは、クールな美人だけど、江名は可愛くて守ってあげたい典型的なタイプだもんね。私が男だったら…江名かなぁ」
「完璧な樋口課長もその辺の男と一緒だったね。やっぱり若くて可愛い子がいいんだよ」
「及川さんは、"私強いです"ってオーラがバンバン出てるもんね」
なに……これ。
聞きたくない言葉ばかりで、息が出来ない。
胸が苦しい。
「及川さん、2人がいても普通だったよね!樋口課長と江名さんとも、平然と話してたし」
「どーせモテるし、苦労しないんでしょ!
私だったら、絶対しばらく仕事来れない。泣いちゃう〜」
パリン、と心が割れた音がした。
「私もー」なんて笑いながら、2人はトイレを出て行った。
手が……震える。
泣いてなかったら、落ち込んでないと思うの?
苦しくないと思ってるの?
毎日、毎日、心がすり減っていく。
自尊心が、欠けていく。
居心地が悪くて。
逃げ場も無くて。
だけどそれでも、気持ちを奮い立たせて仕事に来るのは、大人だから。
何もかも投げ出したいけれど、逃げ出せないんだよ!
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