色とりどりの世界

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「お疲れ」 ん? ポンっと肩を叩かれ振り返ると、文香が立っていた。 「あれ?どうしたの?」 「ちょっと長田さんに用事があって来てたの」 「そうなんだ」 ヘラッと笑うと、文香がぐっと顔を近づけて来た。 「あんたさ、最近何も言わないけど、樋口さんの事大丈夫なの?」 小声でコソッと聞かれる。 「いや、相変わらずよ……」 「やっぱり?今日、飲みに行く?話し聞くよ」 うっ! 今日は、篠宮と謎の約束が……。 いや、だけど篠宮って名前を社内(ここ)では出さない方がいいよね! 誰に聞かれるか分かんないし。 「今日は予定があって…」 「あ、そうなの?飲み会?」 いや、何なんだろう? 飲みに行くのかな?それすら分からない。 聞いても教えてくれなかったから。 「まあ、そんな感じ」 アハハ、と笑って誤魔化した。 気を許している人に言えないのは心苦しい……。 「そっか。最近連絡ないから心配してたのよ。菜月の事だから1人で抱え込んでるんじゃないかって」 「なんてイイやつなの、文香」 ここ最近は、文香の役目を篠宮が担ってくれたんだと思う。 篠宮と2人で会ってるなんて言ったら、文香は驚くだろうなぁ……。 弱みを握られた所までは知ってるけど、まさか2人で食事に行くとは思ってないだろうな…。 だけど、やましいことなど何もないし! またちゃんと話すからね!文香! 心の中で呟いて、チラッと世間話をした後に文香は帰って行った。
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