色とりどりの世界

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19時30分前。 言われた通りに駐車場へ行くと、篠宮が車の前で待っていた。 「お疲れー」 カッチリとしたスーツを着ている事もあるけれど、今日はわりとラフな格好をしていた。 グレーのテーラードジャケットに、インナーは白いカットソー。 黒のパンツのポケットに手を入れて、車に持たれかける篠宮は、まるでモデルのようだ。 「あんたね、誘いが唐突すぎるのよ」 「どうせ1人でいてもウジウジ悩むだけだろ」 「うるさいわ!」 まぁ、そうなんだけどね! さっそく先制パンチを浴びせられた後、社員が来ないうちに、そそくさと助手席へと乗り込む。 「で。今日は何をすればよろしいのでしょうか?」 「口止め料と貸しの分で、2つ俺の言う事聞いてもらおっかなー」 「2つ…」 鼻歌でも歌いだしそうなくらい、気分が良さそうな篠宮はエンジンをかける。 何を言い出すのかと、ドギマギしながら待つ私の心など知る由もないだろう。 「1つ目は……?」 「今からファッショニスタにつき合って」 へ? 「ファッショニスタって、あの有名ブランドの路上ファッションショー?」 「そう。今日は夜でねー、カップル限定なんだよね」 「それが1つ目?」 「そう」 なんだ! ファッショニスタに付き合えばいいのか! 簡単じゃん!!! ファッショニスタは、百貨店の前にステージとランウェイが用意され、有名ブランドが最新ファッションを披露する。 それ故に、最新メイクも参考になり、以前見に行った事があるけれど、とても刺激になった。 「だから、今日は俺の恋人でよろしくね、なっちゃん」 ニコッ。 あざとさ100パーセントの笑顔を向けられるが、色々と突っ込みどころ満載でフリーズしてしまう。 ……恋人? ……なっちゃん?
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