4318人が本棚に入れています
本棚に追加
19時30分前。
言われた通りに駐車場へ行くと、篠宮が車の前で待っていた。
「お疲れー」
カッチリとしたスーツを着ている事もあるけれど、今日はわりとラフな格好をしていた。
グレーのテーラードジャケットに、インナーは白いカットソー。
黒のパンツのポケットに手を入れて、車に持たれかける篠宮は、まるでモデルのようだ。
「あんたね、誘いが唐突すぎるのよ」
「どうせ1人でいてもウジウジ悩むだけだろ」
「うるさいわ!」
まぁ、そうなんだけどね!
さっそく先制パンチを浴びせられた後、社員が来ないうちに、そそくさと助手席へと乗り込む。
「で。今日は何をすればよろしいのでしょうか?」
「口止め料と貸しの分で、2つ俺の言う事聞いてもらおっかなー」
「2つ…」
鼻歌でも歌いだしそうなくらい、気分が良さそうな篠宮はエンジンをかける。
何を言い出すのかと、ドギマギしながら待つ私の心など知る由もないだろう。
「1つ目は……?」
「今からファッショニスタにつき合って」
へ?
「ファッショニスタって、あの有名ブランドの路上ファッションショー?」
「そう。今日は夜でねー、カップル限定なんだよね」
「それが1つ目?」
「そう」
なんだ!
ファッショニスタに付き合えばいいのか!
簡単じゃん!!!
ファッショニスタは、百貨店の前にステージとランウェイが用意され、有名ブランドが最新ファッションを披露する。
それ故に、最新メイクも参考になり、以前見に行った事があるけれど、とても刺激になった。
「だから、今日は俺の恋人でよろしくね、なっちゃん」
ニコッ。
あざとさ100パーセントの笑顔を向けられるが、色々と突っ込みどころ満載でフリーズしてしまう。
……恋人?
……なっちゃん?
最初のコメントを投稿しよう!