色とりどりの世界

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「じゃ、行こうか」 「どこへ?!」 「ファッショニスタだろ。ホテルじゃなくて残念だね」 やーめーてー! なんで私が行きたいみたいになってんの! 「ねぇ!」 「何?」 「なんで、手つなぐの?! 恥ずかしいじゃん、いい大人が!」 こんなバカップルみたいな事、今まで一度だってした事ない! 振り払おうとするも、さらにグッと力を入れて握られる。 一気に体温が上がってしまった事が、篠宮に掌を通じてバレちゃう! 「ファッショニスタのカップル観覧席入るのに、手を繋いで行くのが条件だし」 「はぁ?何、そのふざけたコンセプト! ヤル気あんの、主催者! 沢山の人に見てもらってこそプロモーションでしょ!だいたいプロモーションっていうのは…」 怒りの論点が分からなくなってきた。 そうとうパニックに陥ってるらしい。 「当然、一般席もあるよ。カップルで行けばランウェイに近い方で見れるらしい。 あと新しくオープンした香水ショップのサンプルとか貰えるらしいぞ」 「香水…!」 「いいなと思っただろ?ほら。主催者のプロモーションにまんまとハマってるじゃねーか」 篠宮にアハハと笑われる。 交通規制がしかれている先では、遠目で見ても分かる人だかりと、レーザービームのように光るライト。 近づくにつれ、大音量の音楽が聞こてくる。 「もう始まってる」 篠宮が目を輝かせる。 ……子供みたいだな。 見たいもの、欲しいものを、ただ純粋に追い求める、自由気ままな無邪気な子供。 ワクワクするよね。 気持ちは、分かるよ。 そんな顔をされると、私は手を解けない。
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