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溢れそうな涙を必死に堪えて、トイレを出た。
研修までの時間潰しをしようと思ってたけど、もう誰の声も聞きたくない。
誰の目にも晒されたくない。
研修が行われる会議室とは逆方向へ、俯いたままひたすら歩いた。
───限界。
無我夢中で辿り着いた屋上の扉を開けると、空は青くて、涙が我慢できなくなった。
ここから見える景色は、灰色のビルばかりで、ちっとも癒やしなんて与えてくれないけれど、やっと息が出来た気がした。
「辛い…」
転落防止柵を掴むと、膝から崩れ落ちた。
悲しみとか怒りとか、全部塞ぎ込んで別れたけど、耐えられないくらい苦しい。
もう消えてしまいたい。
こんな事で、人生終えたいなんて思うなんて、思ってもみなかった。
仕事になんか、来たくない。
聡君と江名を見るのが辛い。
『30歳過ぎて彼氏を若い子に奪われた憐れな人』
そんな風に刺さる、同情の目が痛い。
もう、屈辱ばかりの毎日に耐えられないよ……。
仕事中に泣きたくなんてないのに、滲む涙を消し去る方法が分からない。
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