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会場を抜けると、人の流れも右往左往に散らばって、自然と手を離すと立ち止まった。
「ねえ」
「何?」
「なんで私とここに来たの?」
篠宮が振り返る。
「だって、他にも誘える人いっぱいいるでしょ?」
1人ドキドキと変な緊張が走る。
篠宮は「あぁ…」と呟くと
「感性磨きたいのに、恋愛絡みの女と来たら面倒くさいだけだろ」
と言った。
あ……。
なるほど、ね。
確かにそれなら私は持ってこいだ。
恋愛対象じゃないから、面倒くさくない上に、仕事が同じだから分かり合える。
感性を磨きたいと言った篠宮の気持ちは、よく理解できるから。
「なるほどね。確かに」
なんで私は今、少しがっかりしているのかな。
どんな言葉を期待していたの。
「私の為に」って言って欲しかったなんて、どこまで篠宮に甘えてるんだ。
「将来、またファッションコスメの方で仕事したいんだ」
いつもふざけた篠宮が、いきなり真っ直ぐな目をして夢を語るから、ドキッとする。
「そうなの?知らなかった」
「ブランドの立ち上げから携わって、求められる理想の化粧品を作って世に出したい」
自分勝手な自由なヤツに見えるけれど、やっぱり篠宮の根本は求められるものを形にする事なんだね。
ブレない篠宮にも、そこを気づいている自分にも、なんだか嬉しくなる。
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