色とりどりの世界

15/16
前へ
/283ページ
次へ
「きっと、あんたなら新しいものを作れるよ」 お世辞なんかじゃなかった。 篠宮はオシャレだし、勉強熱心だし。 きっとまた、フィールに革命を起こせるよ。 心からそう思う。 「お前なら分かると思って」 私が期待していた言葉よりも、もっと嬉しい事を言ってくれた。 その顔があまりにも嬉しそうで、何故か私の胸を締め付けた。 なんだろう、この胸の高鳴りは。 お祭りみたいな喧騒のせいだろうか。 真っ暗なトンネルを抜けたような、小さな希望が心に芽生えたからだろうか。 篠宮は時計を見ると「メシ食いに行こーぜ、なっちゃん」と、いつもみたいに軽い口調で言った。 「慣れって怖いよね。なっちゃんって呼ばれる事に抵抗がなくなってきた」 「お前はわざと呼ばないようにしてるだろ。口止め料にならなかったら、難易度上げるよ?」 意地悪な顔でニヤッと口角を上げる。 そんな篠宮に反撃しながら、夜の街を並んで歩いた。 一緒に食事をして、他愛もない話しや、フィールの将来ビジョンなど色んな話をした。 それは、とても有意義で、楽しくて。 聡君の事を考えない時間。 この時間がどんどん大きくなればいい。 そうしたらきっと私は聡君への思いを忘れて、また新しい恋が出来る。 篠宮に「前を向こうと思う!」と決意表明したら「ふーん、まぁ頑張って」と興味なさ気に言われたけれど、顔は笑っていた。
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4318人が本棚に入れています
本棚に追加