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「きっと、あんたなら新しいものを作れるよ」
お世辞なんかじゃなかった。
篠宮はオシャレだし、勉強熱心だし。
きっとまた、フィールに革命を起こせるよ。
心からそう思う。
「お前なら分かると思って」
私が期待していた言葉よりも、もっと嬉しい事を言ってくれた。
その顔があまりにも嬉しそうで、何故か私の胸を締め付けた。
なんだろう、この胸の高鳴りは。
お祭りみたいな喧騒のせいだろうか。
真っ暗なトンネルを抜けたような、小さな希望が心に芽生えたからだろうか。
篠宮は時計を見ると「メシ食いに行こーぜ、なっちゃん」と、いつもみたいに軽い口調で言った。
「慣れって怖いよね。なっちゃんって呼ばれる事に抵抗がなくなってきた」
「お前はわざと呼ばないようにしてるだろ。口止め料にならなかったら、難易度上げるよ?」
意地悪な顔でニヤッと口角を上げる。
そんな篠宮に反撃しながら、夜の街を並んで歩いた。
一緒に食事をして、他愛もない話しや、フィールの将来ビジョンなど色んな話をした。
それは、とても有意義で、楽しくて。
聡君の事を考えない時間。
この時間がどんどん大きくなればいい。
そうしたらきっと私は聡君への思いを忘れて、また新しい恋が出来る。
篠宮に「前を向こうと思う!」と決意表明したら「ふーん、まぁ頑張って」と興味なさ気に言われたけれど、顔は笑っていた。
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