4318人が本棚に入れています
本棚に追加
「篠宮」
ポケットに手を入れて近づいてくる。
「あんたこそなんで屋上によく来るのよ」
「知りたかったら、そうだな〜」
「いい、聞きたくない」
危ない、危ない。
また何かヘンテコな事をさせられる所だった。
「なっちゃんは、また江名ちゃんが来て逃避中とか?」
「うるさいなー」
バツが悪いわ…。
こないだ前を向く宣言をした手前、全然諦められてない事が……。
恋に落ちるのは一瞬なのに、恋を忘れるのはどうしてこんなに時間がかかるのだろう。
私と同じように防止柵に両手を掛け、ビルの群れを眺める篠宮。
聡君の話題には触れられないよう、話題を変える。
「そういえば、明日の創立記念パーティー、あんたも行くの?」
「行くけど、本当ダルいわー。
なんで休日なのに、あの下らんパーティーに出なきゃいけないのか分からん」
「おいおい…」
思った以上に乗り気じゃない篠宮に驚きつつも、気持ちは分からんではない。
全国からの役職者、関係者、もちろん本社の重役達も参加する上、若い子達は受付など裏方に回る。
ブランド毎に席も設けられるから、私ら中間層は完全なるサクラだ。
「気をつかうしね」
「挨拶ってあんなに長く話さなくて良くない?特に常務」
「また常務ディスってる…」
気だるそうな篠宮と話をしていると、ポツッと雨が降ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!