パーティーの夜

3/19
前へ
/283ページ
次へ
「篠宮」 ポケットに手を入れて近づいてくる。 「あんたこそなんで屋上によく来るのよ」 「知りたかったら、そうだな〜」 「いい、聞きたくない」 危ない、危ない。 また何かヘンテコな事をさせられる所だった。 「なっちゃんは、また江名ちゃんが来て逃避中とか?」 「うるさいなー」 バツが悪いわ…。 こないだ前を向く宣言をした手前、全然諦められてない事が……。 恋に落ちるのは一瞬なのに、恋を忘れるのはどうしてこんなに時間がかかるのだろう。 私と同じように防止柵に両手を掛け、ビルの群れを眺める篠宮。 聡君の話題には触れられないよう、話題を変える。 「そういえば、明日の創立記念パーティー、あんたも行くの?」 「行くけど、本当ダルいわー。 なんで休日なのに、あの下らんパーティーに出なきゃいけないのか分からん」 「おいおい…」 思った以上に乗り気じゃない篠宮に驚きつつも、気持ちは分からんではない。 全国からの役職者、関係者、もちろん本社の重役達も参加する上、若い子達は受付など裏方に回る。 ブランド毎に席も設けられるから、私ら中間層は完全なるサクラだ。 「気をつかうしね」 「挨拶ってあんなに長く話さなくて良くない?特に常務」 「また常務ディスってる…」 気だるそうな篠宮と話をしていると、ポツッと雨が降ってきた。
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4318人が本棚に入れています
本棚に追加